――ナプキン・タンポンに次ぐ第3の生理用品といわれる「月経カップ」
――ただ日本の場合、膣の中に直接生理用品を入れることに抵抗感を感じる人の割合が多いというデータもあり、生理用品全体でのタンポンのシェアは6%と言われています。 しかし近年ではフェムテック市場への行政の後押しもあり、フェムテック市場をけん引する商品として、にわかに月経カップが注目されています。今日はその月経カップについて、Pillクリニック新宿院長の宮本亜希子先生にメリットやデメリットについてお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願い致します。
――まず、月経カップの一般的に言われているメリットについてひとつひとつ先生にお伺いします。
月経カップが大体1個3000円~5500円くらい。約5年位使えるものが多いのでコスパはいいですよね。ナプキンやタンポンに比べれば間違いなく経済的ですね。
ナプキンやタンポンの場合、毎回トイレに行くたびに交換するかどうかは経血量にもよりますし、個人差もあります。月経期間中に交換用をどのくらい持ち歩くかも個人差があると思います。
一方、月経カップは膣の中に1個と交換用にもう1個持っていればいいので、かさばらないですよね。これは便利だと思います。
経血量が確認できるのは月経カップだけのメリットです。
カップで経血が何ccって見えるのは、自分が過多月経なのか、そうじゃないのかという目安になりますよね。私は女医(女性)なので自分も月経を経験しているから経血量がどうなら多いか、が感覚的に想像できます。例えば患者さんが婦人科に受診して、「多い日用や夜用のナプキンが1時間や2時間で一杯になる」と伝えて頂いたら経血の量がどのくらいなのか感覚的に分かるということです。
しかし、男性医師は月経の経験がないので感覚的には分からないじゃないですか。でもカップで何ccって経血の量を伝えれば男の先生でも量が多いか少ないかわかりやすいですよね。(1回の月経の総出血量は約50〜120cc)
ナプキンの場合は、多い日用を着けているのにすぐ一杯になってしまうことや、漏れて服を汚してしまうという経験をすると、「経血量が多いな」と感じると思うんですが、月経カップは、ナプキンのように漏れの心配も少なく、さらに感覚ではなく目視で多い少ないが自分でも分かるし、人にも説明しやすくなるというのがメリットですよね。
経血の量がわかると病気の発見につながると思います。子宮筋腫とか子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなど。これまでよりも月経量が増えてきたら、何かこういった病気が潜んでいるかもしれない。
あとは、いつもの月経と異なる時期にいつもよりも少ない量の出血があった場合、妊娠の可能性のある女性なら初期の流産という場合もあります。
経血量を“見える化”するとこのように異変にも気付きやすいので病気の発見につながりますよね。「今までと違う」ということで受診するきっかけにもなるかと思います。
余談ですが、出血してたらなんでも月経と思ってしまう方が割と多いんですが、実はそうではないんです。本当の月経とは、排卵して妊娠が成立しなかった場合に、ホルモンの影響で排卵に向けて厚くなった子宮内膜が剥がれてくるのが月経なんです。だから実際は、その出血が月経かどうかは基礎体温を付けていないと分からないんです。排卵すると基礎体温は上昇します。
月経中の低体温期から始まり排卵で体温が上昇して高温期になり、妊娠が成立しないと体温が低下して出血してくる。この場合は月経だと思います。
しかし、ぐちゃぐちゃな体温やずっと低温期のままで出血してる場合は不正出血の可能性が高いんです。
でも、基礎体温をつけている人は限られた人だと思います。ですので、月経カップを使用して、経血量を見ることは「いつもと違う出血だ。これは月経じゃないのかも?」と思うきっかけになるかもしれないですね。
経血と不正出血の見た目が違うかどうかは一概には言えないです。その不正出血の原因が何かにもよりますし。例えば子宮頸管ポリープが捻じれて出血した場合は、わりと鮮血になることもありますし。でも例えば初期の流産だったら、必ずしも鮮血でもないこともあるだろうし、一概には言えないんですよね。ただ、いつもと違う時期に、いつもよりも少ない出血があるなとか、以前よりも出血量が多いとか、月経カップで何ccと目視できると異変に気付きやすいのではと思います。
経血は空気に触れると臭うので、ナプキンは臭いやすんです。
あと、かぶれや痒みなんかもナプキン自体が肌に密着していてかぶれたり痒くなったりもしますし、ナプキンは蒸れますよね。
月経カップは、膣内で経血を溜めるので、経血が空気に触れないので臭いを抑える効果はあると思います。
また、ナプキンのように蒸れることもないですし、肌に長時間、化学繊維が密着もしていないのでかぶれや痒みも抑えられると思います。
実は化学繊維のナプキンやオリモノシートをつけるよりも、通気性が良くて肌触りの良い綿の下着にすることがむれやかぶれやかゆみにはいいのです。
おりものや痒みやニオイについて悩んでいてオリモノシートを常用している患者さんが少なくないんですが、おりものシートを止めてみて通気性がよくて肌触りのいい綿の下着にしてみることをおすすめすると、おりものやにおいや痒み、蒸れが減りましたと言われる患者さんもいます。
おりものシートやナプキンは化学繊維ですので、1日中着けてお肌に優しいものではないですし、痒みや、ムレの原因にもなります。そういう意味でもムレ、かゆみもナプキンではなく月経カップにした方が軽減される可能性がありますよね。
これはもう女の人にしか分からないですけど、体を動かした時に経血がナプキンにヌルっと出てくる感じがすごく不快なんですよね。運動している時に「ヌルっ」と感じるのも嫌だし、体を動かすとナプキンがずれて、洋服を汚してしまわないかという不安もあります。
月経カップは膣内でフィットしていてずれにくいので洋服を汚す心配は減ると思いますし、経血がヌルッと膣から外に出てくる感じが無いので快適だと思います。
タンポンは膣口から紐が出てるので人目も気になりますよね。
月経カップは膣の外に紐が出ていないので人目も気にしなくて済みますし、膣の中と外(温泉やプールの水)もしっかり隔てられているので清潔な感じがしますね。
――膣の中に入れることに抵抗感や恐怖心があるという声がありますが、どうなんでしょうか?
抵抗感ある人は多いですよね。ミレーナなんかもあれは子宮内に挿入するものですけど、あんなに便利なのに、「体に何かを入れる」ということで純粋に抵抗感を感じる方はいらっしゃいます。
それと、今から言うことは時代遅れかもしれないですし、今どきは言っている人はいないのかもしれないですけど、私が思春期の頃って「タンポン入れてると処女じゃない」とか、「処女膜が破れる」とか、そういうのを使う子はなんかちょっとアバズレみたいなイメージや風評被害があったように思います。
マンガなんかでもそういう表現があったりしたと思いますが、そういういかにも日本人らしいと言いますか…処女神話というか、そういうものがいまだに根底にあるのかもしれないのも抵抗感の原因なのではとも思います。
純粋に膣の中にモノを入れるのが怖いっていう方もいらっしゃると思いますし、膣の中にモノを入れている人は遊女的なイメージっていうのも抵抗感の中に含まれてるんじゃないんでしょうか。
それと、性交の経験がない、もしくは少ない方は膣の中に入れることに恐怖心があるかもしれないですね。
年齢問わず、性交の経験もあるのに、内診台が苦手な方は確かにいらっしゃいます。
セックスや出産の経験がある人でも単純に膣にモノを入れるのが怖いという人がいるのかもしれません。
それと出産の経験がある人でも出産のときの会陰裂傷が大きく裂けてしまう人の中には、傷の痛みから内診台に上がるのがトラウマになった人もいますね。
月経カップを洗浄、交換する際に、多目的トイレであれば洗面台がついているのでやりやすいと思いますが、個室内に洗面台が無いとなると交換で手が汚れるのは困りますよね。
ペットボトルに水を入れてトイレに持ち込む人もいるということも聞きますが、それじゃペットボトルのお陰で荷物がかさばるので、「月経カップだと荷物がかさばらない」というメリットとなんか矛盾しますね。どうなんでしょうか。
月経カップは熱に強い素材でできていますし、月経カップの小さい空気穴や凹凸など拭いても汚れが取れない細かい箇所まで消毒できるほうがいいので煮沸消毒が向いていると思います。
もともと膣って無菌ではないんです。膣の中だけではなく、カラダの表面も表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌がいます。
仕事や職種的に自由にトイレに行きにくい方はおすすめですね。
あとは運動の習慣のある方が運動の時に使うとかもいいと思います。
お産の経験がある人、性交の経験がある人は使いやすいとと思います。
性交経験のない人は、月経カップが入るか物理的に厳しいんじゃないかと思います。
月経カップを入れるという手技も難しいのではと思います。
短いつるつるの爪よりも、ネイルアートのデザインの凹凸部分に雑菌が付き易いですし、長く伸びた爪の内側にも菌が付きますから、あまりゴテゴテしたネイルは良くないですね。月経カップを入れなくてもお料理するにしても何するにしても爪は清潔な方がいいかと思いますが。
取材協力:Pillクリニック新宿院長 宮本 亜希子先生
女性が「女性であること」を楽しめる人生を。
そのお手伝いをさせていただけるクリニックを目指します。
「婦人科」といいますと妊娠や病気の時に受診するイメージが強かったり、気恥ずかしさから敬遠する方も少なくないと思います。
私たちは保険診療と自由診療、婦人科と美容医療を用いて様々な側面から女性が「女性であることを楽しめる人生」を送るお手伝いをしたいと思っております。
女性は初潮から月経との付き合い方、避妊との付き合い方、妊娠出産とライフサイクルの計画の立て方、子育てとキャリア形成の両立、更年期の過ごし方など、「思春期」「性成熟期」「更年期/老年期」で
自分との向き合い方も異なります。
また、誰もが抱えるけれどなかなか口に出して言うことが難しい「性」に関する悩みはどの年代も尽きないのではないでしょうか?
女性が一生涯を通して快適に、安心して日々を過ごし、また自由に安全に「女性性」を楽しめるお手伝いをするため、産婦人科専門医として、また、自身の妊娠、出産、子育て、仕事、 恋愛経験を活かしつつ、多くの女性と向き合ってきた宮本亜希子院長が 保険診療とともに、ピル、がん検診、性病検査、ブライダルチェック、美容医療、女性 婦人科形成等の様々な医療を通じてサポートしていきます。
もちろん、なんとなくあっこ先生にお話に来ていただくだけでも大丈夫です。
もっと気軽に女性に寄り添うクリニック、それがピルクリニックです。